サツマシロナガナス
ナス科 Solanum melongena
ナスの原産地はインドという説が有力で、これが世界各地に伝わったが、東洋特に中国、日本では西洋に比べ古くから栽培法や品種の文化が進んでおり、純東洋系野菜といえる。日本では皮まで黒いものが一般的だが、アジアでは「白ナス」は珍しくないようだ。
最も古い文献で正倉院に残されている文書の中に記載があり、当時は貴重な野菜であったそうだ。
古い時代は丸型、長型が2主流をなし、中型の卵型種は交雑によってできたものと考えられている。
この品種は鹿児島(旧薩摩藩領)内で自家採取により保存されてきた固定種で、果長20~30smの長型青なす。果色は淡緑色だが現地では昔から「白ナス」と言い慣わしているそう。
この品種群(白ナス)には丸茄子、長茄子がある。固定種にもかかわらず変異が少なく、交雑率が低いと考えられている。
戦前から作られてきたことは確からしいが、来歴が江戸時代の文献に登場する「白茄」の後継なのか、明治以降に新たに導入されたものなのかは明らかにされていない。
果皮は硬めだが果肉が柔らかく味が良い。
昭和40〜50年代頃まではまとまった栽培量があり、市場出荷も見られたが、近年では性や管理の面から販売用としての栽培は少なく、大きな市場では見られなくなった。とはいえ、地元では、特に奨励品種でないにも関わらず、根強く作り続けられている。
( 出典/1982『原色日本野菜図鑑』 ,種子説明書「野口種苗研究所」,農文協『農業技術大系・野菜編 2000年版』追録第25号)
【使い方】
焼きなすを食べるならこのナスの右に出るものはないと思います。滴る果汁が蜜のようで、大変美味しいです。
皮ごと真っ黒になるまで焼いて(炭火があれば良いが、なければ、カセットコンロなど直火で)、皮を剥き、醤油や鰹節をかけて。カットして出汁に漬け翡翠茄子にしたり、味噌汁に入れるのも良い。
果肉はふわふわしており、味噌炒めなどの炒め物、天ぷらなども美味しいです。